[現役看護師の健康コラム] 「新生活にストレスを感じる」ときに読んでほしい看護師からのアドバイス

新生活でストレスを感じる人は意外とたくさんいますが、多くの人はそのまま毎日をやり過ごして生きています。けれども無理をしすぎて、心や体を壊す人も少なくありません。新生活でストレスを感じる原因はどんなことがあるのでしょうか?新生活にストレスを感じているあなたに、ストレスの原因と10の対処法を看護師がアドバイスします。

目次

現代人の多くがストレスを抱えている

ストレスは、身体的・精神的・情緒的に負荷や緊張がかかった状態です。厚生労働省が2019年に実施した国民生活基礎調査では、全体の47.9%が悩みやストレスがあると回答しています。1)調査では全年代を通して、女性のほうが男性よりもストレスを感じていました。

引用:図21 性・年齢階級別にみた悩みやストレスがある者の (12 歳以上) 割合(12 歳以上) P20  5 悩みやストレスの状況 Ⅲ世帯員の健康状況

また、20代女性の悩みのトップは『自分の仕事について』であるという報告もあり、多くの女性が仕事で悩み、ストレスを抱えていることがうかがえます。

なぜ新生活でストレスを感じるの?

新生活は就職や異動など、自分の仕事にまつわる環境の変化が起こりストレスが増える時期です。新生活に伴う環境の変化は、あなたの心身にさまざまなストレスを与えます。ストレスの要因となりうる点を紹介します。

<原因1>人間関係の変化

いままでの人との繋がりがなくなると、安心できる環境や人間関係ではなくなってしまいます。心を許せる人や時間が減ると、どうしてもストレスを感じてしまいます。日常会話などでストレスを発散しにくくなることも、ストレスの一因となるのです。

<原因2>期待

新生活へさまざまな期待を描いている人も多いでしょう。

「自分は何でもできる」「AもBも頑張ろう」などの『過剰な期待』は時に自分を追い詰め、ストレスになる可能性があるため注意が必要です。

また「自分は何をやってもうまくいかない」という『低すぎる自己肯定感』も周囲の期待とのズレを産みストレスを生じる原因となります。

さらに「新人ならこのような態度をとる」「上司ならこうやってサポートしてくれる」という『他者への期待のずれ』もストレスの一因です。

<原因3>緊張

環境や人間関係が変化すると、リラックスして自分らしくいられる時間は減り、緊張する時間が増える傾向にあります。緊張した時間が長く続くだけでも十分にストレスですが、その時間が長ければ長いほど神経は過敏になりやすくなり、よりストレスを感じるのです。

とくに先輩後輩や上司との上下関係では、より強い緊張状態に陥ることもあります。

時には過緊張とよばれる状態になってしまう人もいます。「仕事のことをプライベートでもずっと考えてしまう」「日中職場でいわれたことが頭から離れない」「仕事のことばかり考えてしまう」……このような状態が過緊張です。過緊張は心身共に強いストレスとなり、不眠やメンタルの不調の原因にもなります。

<原因4>不安

慣れない場所や人間関係で、ドキドキしたり不安に思うことは誰でも起こります。不安な気持ちを持つことは病気ではありません。しかし、不安な気持ちは時にストレスを増強させる要因にもなります。過度なストレスや繰り返されるストレスは、日常生活に影響が出る『病的な不安』や心の病気を引き起こすこともあり、うまく行かない日常にストレスを感じ不安が増強する悪循環に陥る危険があるのです。

ストレスを感じたときに取り入れたい10の対処法

多くの人はストレスにさらされると「解消したい」「これ以上感じたくない」と思うでしょう。ここからは、ストレスを感じたときに取り入れたい看護師おすすめの10の対処法を紹介します。

完璧を求めない

完璧を求めると、自身や周囲の人への期待や要求とのギャップが生じたときに強いストレスを感じます。完璧主義の人の方がうつ病や不安、不眠症を引き起こす可能性が高くなると世界中の研究で報告されています。期待しすぎず、完璧を求めなければストレスを軽減できる可能性があります。2)

ネガティブな思考を断ち切る

ストレスを感じると、多くの人は頭の中でその原因や事象について繰り返し考える傾向があります。繰り返し考えることで、人は無意識のうちに安心感を得ようとしているのです。けれどもネガティブなことばかり考えていると、ネガティブな思考ばかり増幅される危険性があります。繰り返し考えてしまうときには『ロジカルシンキング』とよばれる、情報を整理・分析し結論を導き出す思考に替えるだけでもストレスを軽減できるでしょう。

できるだけネガティブな思考を断ち切り、ポジティブな自分をイメージすることも効果的です。

美味しいものを食べる

美味しいものを食べると、オキシトシンというホルモンが分泌されます。オキシトシンは幸せな気持ちになったり、ストレスを緩和したりする効果があります。

何を食べるべきか迷ったときは、牛肉のステーキがおすすめです。ステーキには、脳の興奮を抑え、心を安定させストレスを軽減するセロトニンというホルモンの基になるトリプトファンが豊富に含まれています。3)美味しい牛肉のステーキは、オキシトシンとトリプトファンのW効果でストレス軽減が期待できます。

帰りたいときは帰る

「どうしても仕事をしたくない」「この場から逃げ出したい」というときもあるでしょう。そのような場合には、無理をすると心身共に大きなストレスがかかります。無理をしすぎると、心身共に不調をきたすケースも少なくありません。どうしても頑張れないときには、帰るのもストレス対処方法の1つです。

一人の時間を作る

誰かと過ごすことにストレスを感じているなら、意識的に一人の時間を持ちましょう。親子や恋人であっても、四六時中一緒にいるとストレスを感じます。職場や学校など上下関係や利害関係が生じる間柄では、余計にストレスでしょう。休憩時間は一人で過ごす、営業先への移動は現地集合にするなど一人の時間を作るとストレス軽減が期待できます。

お風呂に入る

ストレスを感じていると自律神経は緊張しています。入浴で副交感神経が優位に働くと、心身の緊張がほぐれやすくなります。血行が良くなると心身もリラックスし、ストレス軽減が期待できるでしょう。4)

適度に運動する

適度な運動は、心身をリラックスさせストレス解消につながるセロトニンやエンドルフィンなどのホルモンの分泌を促します。適度な運動による疲労感は、質の良い睡眠をもたらします。日常生活での適度な運動は、気分転換やストレス解消に繋がり、生活の質を高めるために有効です。5)

無理して運動する必要はありません。たとえば一駅歩く、少し遠いコンビニまで行く、通り道の公園の中を歩くだけでも十分なストレス軽減効果が期待できるでしょう。

泣く

泣くのは決してネガティブなことではありません。涙にはコルチゾールというストレスホルモンの分泌を減らす効果が期待できます。他にも涙に含まれるエンドルフィンというホルモンには、痛みを和らげる効果があります。さらに泣くとリラックスに欠かせない副交感神経が強く働き、緊張状態の緩和につながることもわかっているのです。ストレスを感じて泣きたくなったら、我慢せずに泣くこともストレス緩和には大切なんですね。6)

誰かに相談する

ストレスの原因によっては、人に相談すると解決の糸口が見つかることもあるでしょう。けれども身近な人に相談できる内容と、そうでない内容がありますよね。

そんな時には、国や地方自治体の相談窓口を利用してみませんか?

プライバシーは守られ、必要に応じて専門家からのアドバイスを受けられます。

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厚生労働省 こころの耳

病院にいく

ストレスを感じて眠れない、食事がとれないなど日常生活に支障をきたしている場合には、病院にいくことも考えましょう。専門家に相談し上手なストレスの対処方法がわかるだけでも、少しだけ楽になるかもしれません。つらい気持ちを我慢していると、心身の病気を引き起こすリスクが高くなります。決して無理はせず、専門家の力を借りることも大切です。

まとめ

多かれ少なかれ、人はさまざまな場面でストレスを感じています。自分を疲弊させるストレスは決して好ましいものではありませんが、『適度なストレス』はパフォーマンスの向上や自己効力感を満たすために重要です。

時に逃げ出したくなるほどの強いストレスを感じるのは自分が弱かったり、ダメだったりするからではありません。ストレスに感じるほど、今のあなたにとってとてもつらい状況であることを知り、自分に優しくしてくださいね。

特に強いストレスを感じると、この場から逃げ出したくなる、死んでしまいたくなることもあるかもしれません。けれども人が生きていくうえでストレスはゼロになることはありません。その代わりではないですが、軽くする方法はたくさんあります。

命を絶つなどの、極端な解決方法は決しておすすめできません。

今回紹介した10の対処法をぜひ参考に、新生活のストレスをうまく乗り切る方法を探してみませんか?

参考文献
1)Ⅲ世帯員の健康状況 国民生活基礎調査 2019年
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/04.pdf
2)BBC – Future – The dangerous downsides of perfectionism
https://www.bbc.com/future/article/20180219-toxic-perfectionism-is-on-the-rise
3)セロトニン e-ヘルスネット 厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-074.html
4)入浴~ストレス解消法~ 特定非営利活動法人 日本成人病予防協会
https://www.japa.org/tips/kkj_1004/
5)運動基準・運動指針の改定に関する検討会 報告書 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xpqt.pdf
6)有田秀穂 涙とストレス緩和 MSD生命科学財団
https://www.msd-life-science-foundation.or.jp/banyu_oldsite/symp/about/info/pdf/3-6_085_089.pdf

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この記事を書いた人

看護師 保健師 糖尿病療養指導士
大学看護学部卒業後、小児・内分泌・循環器科で勤務。看護師として働きながら、知識と経験を活かし、医療ライター・監修者として活動中。

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