頭痛は日本人の多くが抱える国民病です。最近は、頭痛が起こる確率を天気や気圧から予想するアプリも人気で、頭痛に悩む人の多さがうかがえます。頭痛には「大丈夫な頭痛」と「命にかかわる頭痛」があります。2つの違いと注意点を理解し、新生活も健康的に過ごしましょう。
頭痛は日本人の国民病
頭痛は日常的によくある症状です。
頭痛は。頭の血管が収縮や拡張したり、頭の周囲の神経が炎症を起こしたり、筋肉で圧迫されたりすることが原因でおこります。
「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」は「一次性頭痛」ともよばれ、繰り返し自覚することが多い頭痛です。そのほかにも、頭蓋骨内で出血したり、腫瘍ができたりすることで、脳が圧迫されて起こる頭痛を「二次性頭痛」とよんでいます。
15歳以上の日本人を対象にした調査では、8.4%の人が頭痛を自覚しています。なかでも30〜40代の女性は、同年代の男性よりも頭痛を自覚する人の割合が多く、30歳代は約20%、40歳代では約18%と倍以上!
さらに、頭痛を自覚する人の74%が、日常生活や仕事に支障をきたしていることもわかっています。
痛いけど「大丈夫な頭痛」
「大丈夫な頭痛」は一次性頭痛ともよび、はっきりとした原因や病気がありません。「痛いけれど命に影響を与える」ことは少なく、様子をみても大丈夫です。
片頭痛
片頭痛は、頭の片側または両側のこめかみに、ズキンズキンとするような痛みを自覚します。吐き気を自覚する人も多く、仕事や日常生活がままならなくなってしまう人もいます。片頭痛の原因は神経や血管など、さまざまな説がありますが、まだはっきりとしていません。
片頭痛は痛みを自覚する前に「なんだか頭痛がしそうだな……」という予感がするケースがあります。
- 目の前がチカチカする
- だるい
- 気分がすぐれない
- 気持ち悪い
- 眠気を感じる
このような症状を自覚すると、数十分~数時間で片頭痛が起こることがあります。けれども、同じ人でも予感を感じるときと、そうでないときがあるのも片頭痛の特徴です。
また、「どんなときに片頭痛が起こりますか?」というアンケート調査には、以下のような回答がありました。
睡眠不足 | 71.1% |
肩・首のこり | 67.1% |
旅行・買い物 | 65.3% |
過労 | 52.9% |
目の疲れ | 44.4% |
緊張 | 43.6% |
睡眠過多 | 27.6% |
ほかにも、特定の光や音、環境で頭痛を感じることもあるのが片頭痛の特徴です。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、頭や首周囲の筋肉が硬くなり、血流が悪くなることで起こる頭痛です。
具体的には、以下のような原因があります。
- 同じ姿勢をずっと続けていた
- パソコンやスマホを長時間使用し、目が疲れた
- 精神的なストレス
緊張型頭痛を起こさないためには、肩や首の筋肉をやわらかくし、血流を改善させることが必要です。
- 無理な姿勢をやめる
- スマホやパソコンを長時間使用するときは、ときどきストレッチをする
- お風呂に入って全身をあたためて、筋肉の緊張をほぐす
群発頭痛
群発頭痛は、副交感神経の刺激で起こると考えられていますが、原因ははっきりしていません。一度頭痛を感じると、数か月にわたって、ほとんど毎日・同じ時間に頭痛を感じるのが群発頭痛の特徴です。目の奥がとても痛くなり、涙や鼻水、鼻づまり、汗をかくなどの症状がみられることもあります。
二日酔いのあとの「頭痛」
アルコールが代謝される過程でできるアセトアルデヒドが、頭痛の原因になります。時間が経って酔いがさめてくると、症状は自然に良くなります。水分をしっかりとって、ゆっくり休むようにしましょう。
いつもと違う頭痛の多くは「命にかかわる頭痛」
「命にかかわる頭痛」には、頭痛以外に以下の症状があります。
「今まで経験したことのないくらい痛い」
「頭を殴られたような痛みがする」
「気持ち悪い、吐いた」
「気が遠くなった」
「手足がしびれる」
「目が見えにくくなった」
原因はくも膜下出血(くもまくかしゅっけつ)や脳出血、頭の血管が裂けてしまう脳動脈乖離(のうどうみゃくかいり)、脳腫瘍(のうしゅよう)などです。
何らかの病気がきっかけで、脳の血管や神経が圧迫されて起こる頭痛で、二次性頭痛ともよばれます。
これらの頭痛は、治療・診断が遅れると後遺症が残ったり、命を落とすこともある危険な頭痛です。
いままでに感じたことがないくらい痛い、頭痛がどんどんひどくなる場合には、我慢せず病院を受診しましょう。
頭痛とうまく付き合う方法
多くの人が悩まされている「頭痛」。実は筆者も頭痛持ちで頭痛外来で治療した経験があります。今回は頭痛持ちの現役看護師が実践する、頭痛とうまく付き合う方法を紹介します。
痛み止めに頼りすぎるのはNG!
不適切な頭痛薬の使用は「薬物乱用頭痛」になってしまう危険性があります。頭痛薬を適切に使用しないことが原因で頭痛になってしまうって、少し怖いですよね。
薬物乱用頭痛の診断基準は以下です。
- 以前から頭痛があって、1か月に15日以上頭痛がある
- 1種類以上の頭痛薬を、3か月を超えて定期的に使用している
(治療薬により1か月に10日以上、もしくは、15日以上使用) - ほかの病気が原因の頭痛ではないと診断されている
- 頭痛薬の効果を感じなくなった
薬物乱用頭痛は、頭痛薬の使用回数を減らす、もしくは頭痛薬を使用しないことが治療の第一歩です。けれども、適切な方法で薬の使用回数を減らさなければ、余計に頭痛がひどくなってしまう危険性があります。
頭痛がひどいときには、専門医に相談し、適切な治療をおこなうことが薬物乱用頭痛を起こさないために重要です。また、頭痛薬を頻回に使用している人は、早めに専門医に相談することも薬物乱用頭痛を発症しない・悪化させないために大切です。
頭痛ダイアリーは「頭痛がいつ起きて、どのくらい続き、どこが痛むのか」「日常生活に影響があるのか」「頭痛薬はいつ飲むのか」を記録する用紙です。頭痛ダイアリーを活用すると頭痛の原因と特徴を把握し、頭痛を起こさない行動ができ、頭痛薬を飲むタイミングを把握しやすくできます。さらに、自分の頭痛を医師にも伝えやすくなります。
手書きで記載したい人は、日本頭痛学会からダウンロードできます。
手書き:頭痛ダイアリー PDF
(一般社団法人 日本頭痛学会)
また、頭痛を記録するアプリもあります。
iPhone:AppStore 頭痛ろぐ
Android:GooglePlay 頭痛ろぐ
(HEALINT PTE. LTD.※アプリ内課金があります)
病院を受診する
頭痛は市販薬でも対応できるため「病院にいこう」とは、思わないかもしれません。けれども頭痛は、命にかかわる病気が潜んでいる危険性がありますし、専門的な治療で症状を軽くすることができます。
最近では、専門の病院も増えています。「頭痛 クリニック」で検索すると、お近くの頭痛外来を調べることができます。
筆者も頭痛外来を受診し、治療を受けることで頭痛を軽減できました。頭痛に悩む人は、専門病院の受診をおすすめします。
現役看護師からのアドバイス
頭痛に悩まされている人の中には、市販薬で頭痛をやりすごしている人も多いでしょう。けれども、仕事や日常生活に支障をきたしたり、気分がゆううつになったりするようでは、上手に頭痛と付き合えているとはいえません。
時には、くも膜下出血や脳腫瘍など、後遺症を残すような病気や命にかかわる病気が隠れていることもあります。「いつも頭痛がするから」「頭痛なんてみんなあるでしょ?」と放置せず、一度は病院を受診してください。重大な病気が隠れていなければ安心できますし、頭痛専門の病院であれば頭痛との付き合い方も教えてくれます。新生活を健康的に過ごしていくために、頭痛に悩む人は早めの受診をおすすめします。
参考文献
1) 京都頭痛宣言 2005 一般社団法人 日本頭痛学会
https://www.jhsnet.net/kyoto_2005.html
2)慢性頭痛の診療ガイドライン 2013 日本神経学会・日本頭痛学会
https://www.jhsnet.net/GUIDELINE/gl2013/gl2013_main.pdf
3)akai F, Igarashi H : Prevalence of migraine in Japan : a nationwide survey. Cephalalgia 1997;17:15-22.
4)Robbins L : Precipitating Factors in Migraine: A Retrospective Review of 494 Patients. Headache 1994 ; 34(4) :214-216.
5)8.2 薬物乱用頭痛 日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会:国際頭痛分類 第3版,2018
P118https://www.jhsnet.net/kokusai_new_2019.html